NYの日系コミュニティガイド
NY EVENT
Vol. 32  「母は強し」 メリーランドから駆けつけたマイクのお母さん
2008/09/01 UP

 「女は弱し、されど母は強し」あまりにも当たり前で一体どんなことなのかと忘れがちだ。ところが最近、私からロフトを購入してくれたマイクの母をみて、「うわぁ、このお母さんスゴッ!」まさに「母は強し」のライブパフォーマンスをみせてもらった。

 私には子供がいないから歳をとっているわりには人前でまだできないことが沢山ある。例えば、外で大声で怒鳴る。大抵は子供の危険を感じて「こらぁ〜〜!まてぇ〜」みたいな感じでどなっているのだが、なんと悲しいことにその声は子供本人には届かず、周りの大人にしか聞こえてない。せっかくすっきりまとめた髪も抱いている幼児によって解いたほうがいいよっていいたくなるほど縛ってる髪がみだれてる人。常に両腕、両手を開放していないといけないためにウエストポーチを腰から離せないでいる人。それでも子供の安全と自分のコンビニエンスを考えるとついつい「どうにでもなってくれ、生きてるだけで精一杯よっ」という感じできっと人目はどうでもよくなってしまうんだろう。姪や甥っ子の面倒を見るのは結構好きで自分から率先して引き受ける。、それでも、いざ自分に都合の悪い事がおきると「あぁ、この子ちょっとおかしいよっ、変だってば」といって放棄する。一度、姪のトイレトレーニング期間だということを忘れて、パンツ姿で彼女と外出したことがあった。途中、公園にいった。私は子供が夢中になるとトイレにいくを忘れるということをさらに・・・忘れていた。母親は彼女のトイレのスケジュールを考えながらトイレにいくんだよということをリマインドするらしいが、私はそんなディープな子守は担当できない。本人が楽しく遊んでいるのならそれでいいじゃん?と思っていたが、いきなり砂場から「あぁ、おしっこしてるよ〜」という声が聞こえた。そういう時、きっとお母さんというのは「あちゃ〜」と思いながらもわが子をその場からレスキューするのだろうが私はよその子供に「この子おしっこしてる」といわれたのが最高に恥ずかしすぎで思わず無視してその場から立ち去りたかった。おしっこもらしているといわれた事がまるで自分の事のように最高に恥ずかったのだ。結果、私は少し歳の離れた別の姪を呼びつけ、彼女を砂場から連れ去るように命令した。そして私は先にその公園から姿を消し、そのあと姉に散々文句をいった。母親というのは朝から晩まで子供の食べること、下の世話を何年間もするわりにはなんと見返りの少ない労働だとつくづく思った。せめて子供にいつか感謝されればいいものをそれをあだで返すような人間だけにはなってもらいたくないもんだ。こんなに歳をとってしまって自分はまるで一人で勝手に成長したんだくらいの気分でいるが、こんな自分も誰かが下の世話をしてくれて、私に食事を与えてくれたからこそ今の自分があるんだとふと考えるとなんとも親の有り難味を感じる。

 正確にいうと母ではないが私が母性を発揮するのは唯一、わが子のようにかわいがっている愛犬と接するときだ。彼女といると平気で人前であろうがあら不思議、赤ちゃん言葉で話してるじゃないの。しかも、自分でもこれはおかしいし、人がこんなことをしている姿はみたくないと思いつつ、声のトーンも妙に上がってしまう。自分でも分かっている、とても気持ちが悪い!人にどんなに気持ちが悪いから止めてくれと切実に訴えられようが、そんなことをいう人がおかしい、かわいいと思うと自然とこんなになってしまうんだから仕方がないじゃないかとかえって、批判的になってしまう。きっと母になると我が子がかわいいあまりにあり得ない、別の自分の姿になることもあるのだろう。だから女でいるうちは弱いけれども母になるとどんな女も、あれよという間にそこ力をだせるのだと思う。

 大人のソーホー(Soho)とも呼ばれるブルックリンのダンボ(DUMBO)でロフトタイプの物件の販売を担当した。ファッションとアートで有名なソーホーも近年、不動産価格の上昇で新人アーティストや斬新なアイデアのファッションやビジネスをやる人には経済的な面で大変都合が悪く、よって最近のソーホーは高級ファッションの店ばかりでまるでマディソンアベニューや5番街のようなお店ばかりが目立つ。フェラガモ、シャネル、バーバリー、プラダのような高級ブランド、カタログやインターネットでも購入可能なヴィクトリアシークレットやオールドネイビーだ。それらのものはわざわざニューヨークのソーホーまで足を運ばなくても、カンザスのショッピングモールでも購入できる。田舎に住む人もボーダレスにそしてファッショナブルに都会の人と変わりなくなんでも購入できるようになったのはいいのだが、ニューヨークはもっとニューヨーク、ソーホーだというアイデンティティーをもっと主張すべきだと思う。20年前にソーホーに行ったときに大してファッションの先端を常に気にしていたわけでもない私にはただの怖い、なんとも薄暗い場所にしか見えなかった。ところがあれよあれよというまに、アーティストが住むロフトは高級コンドミニアムになり、ブティクや小さなコーヒーショップだっ場所は銀行になり、フリーマーケットが開催されていた空き地は新築のコンドミニアムになった。だから最近マンハッタンは面白くないんだと言う人が次にたどりついた場所がブルックリンのダンボ。ここは至ってマンハッタンに近く、川を隔ててきた甲斐もあるってもんでマンハッタンを一望できるアパートがわんさかある。ロフトタイプのビルが多かったことから、最初にソーホーを出た人が移り住んだこともありアーティストが多く住んでいる。そこはまさに映画でみたことがあるニューヨーク情緒がたっぷりな場所が多い。2軒とない小さなセレクトショップやアートスタジオやライブハウスもまだある。ブルックリンって遠いいじゃん、とか危なくない?と未だに思っているマンハッタンの人はとりあえずブルックリン・ブリッジを歩いて渡ってダンボにくるといい。きっと、ブルックリンも悪くなよと言って帰ること間違いなし。

 担当したアパートを見学したいといってコンタクトしてきたマイク。最初の見学の連絡事項もお互いブラックベリーで会話をするようにいったりきたいり出来るからきっと年齢も若いと察した。それでも60万ドル近い物件をみたいというのだからきっとIT関係か何かを仕事にしているのだろうと勝手に思った。早速、当日夕方になってマイクと会った。顔つきからまだ20代だろうと察した。話を聞くと今はサンフランシスコに住んでいるがお姉さんがニューヨークに住んでるし、仕事は世界中どこにいてもできるからできれば生活にメリハリのあるニューヨークに住んで仕事をしたいと思っていると話をしてくれた。彼が持っていたのは最新のiPhone、やっぱりIT関係の仕事をしていた。いくら一人で住むとはいえロフトタイプのアパートでもベッドルームが別にあるところがいいかもということで、別の物件を同じ日に紹介することした。そこはマイクが思っていたところよりも3万ドルほど高いが、もしかしたらお母さんが気に入れば買えるからということだった。お母さんが気に入ったらって・・・住むのはマイクだよね?お母さんってどれくらい頻繁に泊りにくるわけ?と思ったがとにかくお母さんが気に入らないと駄目らしい。アパートの写真をとって30分はその空間にいただろうか、お母さんがそのアパートをみたときにどこをチェックするかということを一生懸命に考えていた。マイク本人は大変気に入って、そのロフトではないけれどもロフトタイプのアパートに住むことを想像していた。それでもここでのキーパーソンは私の目の前にいるマイクではなくてその母だとうことで、お母さんに確認してそれでオーケーがでたらオファーしましょうということでマイクと別れた。

 早速、次の日にお母さんのオーケーがでたといってオファーをした。マイクがオファーをしてくれた物件は事情つきの物件で、細かくいうと実際にはマーケットにでているというよりも出る可能性がある物件だった。どういうことかというとその物件には今、買い手がいるがなんらかの事情で買い手はローンを組むのが不可能になったという事情の物件だった。だから、買い手が頭金を犠牲にしてその物件を買う権利を放棄しないと実際にマイクは購入の手続きができないという事だ。もし今の買い手が権利を放棄した暁には最初にマイクに買う権利を与えられるというストーリーのある契約になった。よって問題は今いる買い手と売り手の弁護士の話合いがどのくらいスムースにいくかだった。ところが一週間たっても売り手の弁護士から何の返事も来ない。買う気満々で気分が盛り上がっていたマイクだが、終いにはあぁだこうだといって私を困らせた。わめく大人を黙らせるのは比較的簡単で、ただ単にこちらが冷静に対応、ときには冷静というよりもほとんど興味がなさそうに対応(・・・とうか無視)すると相手もそのうち自分はなんてばかげた事で騒いでいるのかと気づいてくれる。ところがマイクが欲しいと思っていたものがなかなか手に入らずいらいらしているところで、メリーランドに住むマイクの母が登場した。

 一週間ほど毎日のようにマイクにあともう少し待っててね、返事がきたらすぐに連絡するからねと同じ話をしていたがあるときお昼すぎにマイクの母だという人から連絡がきた。今、メリーランドからニューヨークにいく電車の中だけど「今日中」にマイクのアパートを買うからどこか見せてっ!といってきた。勿論、私としては「今日中」に一件でも契約が成立するならば万歳というところだが、3時過ぎにブルックリンに一度も来たことのない人に案内して、納得して買ってもらえる物件はなんだろうと短い時間で必死に考えた・・・・というか焦った。しかも、どんなに私が夜中までお付き合いしますよ、絶対に探しましょうとやる気を出したところで物件に足を運べる時間は限られれいる。大抵は5時または6時までと決まっているし、移動にも時間がかかる。どうしようかとあたふたしている間もなく、とにかくニューヨークについたらここに来てくださいという住所を言った。挨拶をゆっくりする間もなかったが驚いたこと・・・というか私が計算にいれていなかったこと。マイクのお母さんは田舎の母ちゃんらしくとっても太っている。とにかくあっ!と対面した瞬間から息切れをしていて汗をだくだくと流している。私は馴れた道順だからさっさとポイントを押さえてみることができるが、これからハリケーンのごとく凄い勢いで何軒も案内しようかと思ったが一気に頭の中で予定の変更をした。最初にみた物件はセールスセンターが隣同士ということで歩く距離が20メートルくらいだったと思う。とにかく私がポイントをあとから説明するからあまり売り手のエージェントに質問をしたりしないでということを最初に話した。何故ならばそんないらない説明で時間をとると移動時間が短くなってしまって足をからませないと移動できない状態になりかねないからだ。すると、2件とも母はいきなりエージェントが一生懸命説明している横で「あっ、ここ駄目ね」といって説明の途中で「はぁ〜、はぁ〜」と気のない返事をした。次の物件にいくのに移動にタクシーを使いたいところだがまずはタクシーを待つ時間がない、それと次の物件というのは大通りをはさんで向こう2ブロックくらいのところだから私だったら、通りをダァーっと走って3分なのだがどうするかと考えた。それでも車でいくと大通りの向こう側にいくだけで大きく回らないといけないこととやたらと渋滞で返って時間がかかると思い、焦らない程度に急いでもらった(?!)次の物件についたときにお母さんは頭が痛いといってものすごい多きなアドビルが入ったボトルを出した。ちょっと思ったがそれでなくても移動が大変なのにどうしてこんなに無駄に大きなボトルをバッグにいれておくのかもの凄い不思議になってしまった、それでもそれは彼女の日常だからあまりどうでもいいことなのだろうと考えなおした。次の物件をみたときにいきなりお母さんはマイクに「ハイ、もうこれないなさい。今買いなさい!これください」といった。これくださいっていうのはあり得ない、まずは値段は契約内容の交渉をしないとならない。マイクは「そお?じゃ、これにするよ。やっぱりこっちにする」と素直に聞いていた。それでも私はなんだか疲れてきていきなりこれでもいいやという面倒な気分でそんな事をいっているのならばあとあとあの時どうしてこのことをいってくれなかったんだとか言われるのではないかと察して、この物件に至って近い物件をもう一件案内してそれと比べてそれでも気に入ってくれたら購入を決めてもらいたいと話をした。だから息切れしているお母さんを無理やり最後の力を絞ってもう一件足を運んでもらうことにした。すると迷ったが値段や立地を考えてやはりさっきみた物件がいいわとお母さんがいった。そのあともうおなかすいてて何も考えられないしと言った。凄い決断力のお母さんだ。息子がニューヨークで不動産購入に戸惑っていることに苛立ちを感じ、まるでパンツや靴下を買うノリで「ほら、も〜これにしなさい。いいでしょ?」そして2時間足らずで6千万円近い買い物を息子のためにしてしまった。

 お母さんいわく、苛立つマイクを見ていてかわいそうになって私が助けないとだめだと思ったの。私は子供のためなら何が必要かすぐに判断できるのよ。大して気に入ったわけではないけどとりあえず彼が支払いに困らないように助けてあげることもできるからこれでいいわっ・・・凄い!マイクのお母さんをみてると母ちゃんパワーがじわじわ伝わってくる。実はマイクをみたときちょっとどこかちょっと懐かしい顔をしてると思ったが彼のお母さんは韓国の移民だった。私はこのアメリカ人並みに太ってるお母さんをみてどこか日本人みたいな・・・まさか、と思ったら韓国人だったとは。それにしてもアメリカに長く住み、子供を産み育てるとここまで強くなれるものかと関心せざるおえなかった。お母さんのおかげでブルックリンのダウンタウンにあるロフトを購入することが出来たマイク。お母さんがみたててくれたアパートだから彼も安心して仕事に集中できることだと思う。人間の母親というのは子供がトイレに一人でいけるようにトレーニングをして、一人で食事をとれるようにしたり、子供が仕事についても仕事に集中できるようにとたった2時間で不動産購入のお手伝いをしたり、なんとどんなに子供が大人になっても生涯かけて子供の心配をしているものだとつくづく感じたのだった。


 

文/写真/情報提供 keiko Matsumura
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