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2008年8月、4年に1度の世界のスポーツの祭典、オリンピックが中国で開催される。今回のオリンピックの見所はスポーツだけにとどまらず、中国という開催地にも面白さが秘めている。日本で散々話題になっていた「偽造遊園地」。その遊園地のキャラクターは、中国以外の人が見ればどう見ても世界的に有名なディズニーやワーナーブラザーズのキャラクター、それに日本のキティーちゃんなどのキャラクターを完全コピーした姿・形なのに、その遊園地の関係者は「キティーちゃん、知りませんねぇ」とか、耳が大きくて、赤い蝶ネクタイに白い手袋、赤いパンツをはくネズミ「見たことありませんねぇ〜」。「うちのがオリジナルです」。もう怒る気も失せてしまうほど堂々と商売をしている。
それでも、純粋に中国の子供たちがマジ楽しそうにしているのなら100歩譲って「も〜いいかっ」って、言いたくなるくらいに中国国民の盛り上がりようといったらない。それに輪をかけて私が腰を抜かすほど笑ってしまったのは「中国で人気のシマウマ?!」だ。なんとそのシマウマのシマは、白い馬に黒いペンキでシマを書いている。ようするにシマウマのようなルックスにされたただの白い(っぽい)馬だ。それをシマウマを見たことのない中国の人々はわれ先にとこのシマウマをみにきているじゃないか。まるで幻の白いユニコーンをみているかのようにみんな大喜びだ。だからそこで、「実はこれは本物のシマウマという動物ではありません」といったところで、誰もいい気分にはならないだろう。だからいっそのこと、その偽シマウマを見た人たちには「私はシマウマみたことある」で通してもらいたいもんだと思ってしまう。人生いろいろあって、真実だけがすべてってわけではないし、やたら滅多に事実だからって伝えればいいってもんじゃないような気もしてくるのは、私だけだろうか。
普段、スポーツ観戦をするわけでもないし、特にこれといってヒイキにしているスポーツもない。それでもなんだか4年に1度のオリンピックだけは、熱くなってしまう。宗教や文化に関係なく世界共通のルールの中で勝ち負けを決めるだけの単純さがオリンピックの面白さだと思う。私のように単純な人間は特に混乱した曖昧な世の中でどのような立ち居振る舞いをしたらいいのか分からなくなるときがある。欧米に見習ってゆとり教育とかいうのを真似して、隔週土曜日をお休みにしたところでなんだか日本の子供の学習能力が低下したといって疑問を感じてやはりそれは失敗だったか?って・・・遅いって。自分が子供の頃は日曜日しか休みじゃなかったけれども高校を卒業するまで休みは週一と決まっていたから逆に働くようになって土曜日と日曜日お休みしていいなんて何をしてすごせばいいのか戸惑ってしまったほどだ。(ところがこの習慣は結構あっという間に体が慣れる)曖昧に他国の真似をしたところで日本人の肌(生活習慣)に合うかというとこれは迷うところだ。あれこれ考えたところでいつも答えはグレーな事が多い気がする。だから余計にどんなに悔やんだり泣いたりしたところでその時にその場で結果を出す、出さないといけないというオリンピック競技はなんとも白黒はっきりしていて、見ていて気分もスッキリとする。
オリンピックと同じぐらいここ最近、アメリカの不動産業界で話題になっていることといえばサブプライムローン問題だ。2007年の夏以降、ニューヨークでもサブプライムローン問題が個人の不動産購入者に与える影響は少なからずあったようだが、ニューヨークの不動産マーケットは他の州に比べるとさほど影響はないようだった。私の仕事にも少しは影響があるのかなと覚悟はしていたものの、残念ながら私のお客さんで何十億円もするようなビルを買う人や、お金余ってますぅ、不動産でも買って税金対策したいんですけど・・・などというタイプのひとはいないので、ほとんど影響はなかった。私が不動産購入のお手伝いをするお客さんの90%は、純粋に自分が生活するための不動産を購入する人たちだ。ニューヨークで仕事がある限り、人は住むところが必要だ。だから私の仕事も細々とだけども火を保ち続けることができるだろうと思う。がっ!最近になってこれがサブプライムローンの影響かぁ、と思う経験が一度だけあった。
2007年11月、サンクスギビングデーの前の週にケンジントンにあるワンベッドルームの物件のオープンハウスをしたときのことだ。売り手としては年内には買い手を決めておきたいところではあったが、実際のところアメリカではサンクスギングデーあたりからクリスマスまでのいわゆるホリデーシーズンに不動産を買うという余裕のある人は少ない。余裕というのは、お金のほうではなくて時間だ。「師走」はアメリカ人にも訪れる。この時期は、どんな仕事をしていようが、子供がいようがいまいが、なんだかんだでみんな忙しい。だからこの時期にゆっくりと不動産を購入しましょう、というのが無理な話なのだ。
そうとわかっているのに、何であえてこの時期にオープンハウスをしたのかというと、数少ないながらにも、その忙しい週末の時間をわざわざさいてまで足を運んでくれる人というのは相当真剣に不動産を買う気がある人たちだと思うからだ。だから意外にも成果を得ることが出来るのではないか、という期待を込めてのオープンハウスだった。運悪くその週末はさらに雪(というか、みぞれ)が降っていてどんよりと暗い日だった。予定を組んでしまったから雪が降ってるからといってオープンハウスをキャンセルするのもなんだし、キャンセルしたところでうちでごろごろとしているのなら、ぼやっとでもオープンハウスをしてコーヒーを飲みながらゆっくりと2時間新聞でも読むかという気分でいた。
アパートに入って電気をつけ、テーブルがなかったからキッチンのカウンターに新聞を広げてだらりとしていると、始まって間もなくお客さんが1人入ってきた。私があまりにもリラックスしていたらしく「えっ!ここオープンハウスだよね?」と聞いてきた。私もまさか人が来るとは思ってなくて、110%仕事モードではなかった。だからまるで家で新聞を読んでいるときのように、いかにも気の抜けた面をしていたのだろう。最初から間抜けな面をみられてしまってなんだか今更ビジネスモードにもなりきれなくて、まるで友達が家に遊びにでも来たかのように「寒いよねぇ、天気最悪じゃん」みたいなのりで話をしていた。お客さんもなんか私につられて新聞を読んでだらだらとしてクリスマスプレゼントは何を買うべきかなんて話をしていた。
そのうち、「それでこのアパートだけど誰か買い手はいるの?」と聞いてきたので「売りたいんだけど、この時期なかなか売れないんだよねぇ」というと、今度は何をつられたんだか「そしたら私が買うよ」といってきた。「買えるなら買ってよぉ」。「本当に買いたいよ」。「本当に買ってもらいたいよ」、と2人の間でなんとも間抜けな会話が続いた。どうせ買わないだろうと思っていた私は最後の最後までビジネスのスイッチがはいらないまま全く彼女にはセールスをする気にもならなかった。2時間がたちオープンハウスが終了した。それから家に帰る途中、その日、唯一来たお客さん、レベッカから電話があった。「ねぇ、やっぱりあのアパート買いたいんだけどどうすればいいの?」それから少しだけどうすればいいのかということの説明をした。それでもこんな時期に買い手がみつかればラッキーくらいの気持ちでいたからあまり彼女にがみがみとどうするべきかという説明をしなかった。
すると次の日には私が言ったとおりの準備をしてきてくれた。アパートというのは同じものは世界に2件となくて大抵の買い手にとってはオンリー・ワンの物件だ。レベッカにとってもケンジントンのアパートが彼女にとってのオンリー・ワンの条件にはまったのだろう。それに彼女の場合は、何でもいいから年内に不動産を購入するという目標もあったようだった。レベッカは過去何年か毎年1月になると、今年こそは不動産を購入しようと決心するのに、仕事の忙しさにまぎれてついついその目標が達成されないでいたようだ。だからなんでもよかったといっては嘘になるけど、適度に条件があう物件があったら買うという目標を年内に達成させたかったということだ。
なんともいさぎのいい人だと思うが、何度かレベッカと話をしていると彼女の淡々と仕事をこなしたり、人生の目的をひとつづつ達成させるという彼女の生き様が感じさせられることがあった。レベッカはメジャーなテレビ局の夜のニュースのプロデューサーだ。しかも世界のニュースを担当するだけあって世界中を仕事で飛び回っている。忙しいにも関わらず、一度、購入すると決めてからはあっという間にボードパッケージを提出して、しかも記録的な速さで購入までの準備をしてしまった。ところが年があけて、2月になってもクロージングの連絡が来ない。モーゲージブローカーは銀行側がなんだかんだと理由をつけてなかなかローンを組もうとしてくれないと言っていた。それでもレベッカが組むローンというのは$200,000だからニューヨークで不動産を購入する際の額からいえば下から数えて数パーセントの額だと思う。これが彼女の収入よりもはるかに大きい額だったり、よほど怪しい仕事をしているとか、クレジットが悪いというのなら仕方もないが、きちんとした仕事をしてるレベッカにはどれにもひっかかる要素がない。私たちは銀行が必要だというドキュメントを揃えては提出してというのを繰り返した。
3月になっても4月になっても、それでもクロージングできる様子がなかった。毎週のように今週こそはOKでるかもねと、話しているのに銀行からは何の音沙汰もなかった。とうとう5月の終わりになって、レベッカがローンを組もうとしていたワコビア銀行が直接銀行で住宅ローンを申し込む以外の新規のローンは受け付けないという発表を出した。っていうか、半年間もやり取りをしていてどうしてモーゲージブローカーは何も言ってくれなかったのだろう、と不思議に思ったが、あとから聞いた話によると、実際のところ大抵のモーゲージブローカーは口をそろえてそんなことになるとは思いもよらなかったと話してくれた。だから銀行が勝手に下した決定であって、レベッカのモーゲージブローカーを恨んだところで何の解決にもならない。それでもレベッカは彼にたいして時間の無駄をしたということでキレて彼を首にしてしまった。ローンを実際に組むまではアプリケーションの料金以外に費用はかからないから、半年という時間を無駄にしたものの金額的に無駄になったのは申し込み手数料の$350だけだった。
それからというもの私たちは必死になってこのままローンのアプリケーションを引き継いでくれるブローカーを探し、ローンを受け継いでくれる銀行を探してもらうことにした。何よりも時間を無駄にしてしまったことに一番の苛立ちを感じ、このときはブローカーを3人使って彼らにまるで競争をさせるようにプロセスをしてもらった。結果的にレベッカがアパートを購入するまでに、このローンの問題がなかった場合の4倍近くの経費がかかってしまったのだが、彼女は7月には晴れてアパートを購入することができた。サブプライムローンの問題で銀行の条件が変わったりして大変なこともあったが、でも11月から7月までの8ヶ月間の間にマーケットが下がったのかというとその逆で、その近辺の同じ条件のアパートはどんなに目を皿にして探しても2,3万ドルは多く払わないと購入することができないくらいになっていた。
サブプライムローン問題のおかげで購入までに必要以上の努力を要したものの、いまレベッカは晴れて不動産オーナーになった。年は変わったものの不動産を購入するという目標も達成することができた。途中、何度もマーケットが悪い、サブプライムが悪い、経済が悪いと理由をつけてはやっぱり自分は買うべきじゃないとあきらめそうになったレベッカだったが、彼女にとってこのケンジントンのアパートは最高の条件だったし、彼女にぜひ目標を達成してもらいたかったこともあって、私も諦めないようにと何度となく励ましてきて良かった。鍵を手にした日は、まるで試合でいい結果を出すためにがんばってきたコーチと選手のように、手を握り合ってその瞬間を喜んだ。こういう瞬間があるからやっぱり不動産の仕事は楽しい心から感じた出来事だった。
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