NYの日系コミュニティガイド
NY EVENT
Vol. 30  「キィーコーマツムーラ」忘れかけていた仕事への情熱
2008/07/01 UP

 アレックスとの訴訟がマイブームになって(何のこと?と思ったかたは、前号までのお話を読んでくださいね!)、すっかり他事が疎かになっていた私。春になったらテニスを始めようとか、ゴルフのレッスンを受けよう、お習字も習いたいし、そうそうお華のお稽古もいいな。なんて、考えていたのに、いかにして私の生活の多くの時間がアレックスとのことに費やされていたか。もう夏!という今ごろになって気がついた。何も楽しい事してないじゃん・・・。なのにもう春が過ぎて夏ジャン! いい加減にアレックスブームからお別れしよう。後は弁護士に任せてフン、フンそうか、そういうものかと話を進めてもらえばいいわけで、あまり私が主導権を握るのはやめよう。そういえば、近頃はこのプロジェクトのことで頭が一杯で友達と会うこともなくなってきたなぁ。さて誰から連絡しようかな、と思っていたところに丁度、同じく不動産のお仕事を近所でするエリザベスからランチをしないかと誘われた。

 彼女はとっても信心深い人で、いつ会っても清らかな心でいるように見える。泥まみれの生活をしている私とは対照的で、彼女に会うたびに心が洗われるのだけど、たまに、私が彼女の清らかな話に否定的になったり敵対心まるだしで話を聞いてると、マザー・テレサの心を持つエリザベスからも本気で脅かされることがある。そんな女は不幸になるわよっ!みたいにねっ。しばらく清らかな心とはかけ離れた生活を送っていた私は、久しぶりに彼女に会ってアレックス以外の話でもするかと待ち合わせのカフェで彼女を待っていた。

 なんとなくその日は「よ〜し、半分過ぎてしまった2008年、遅れを取りながらもあと半年は内容の濃い年にしよう」なんて思って、晴れ晴れとした気分で外の席に座って考え事をしながら待っていると、「キィーコーマツムーラ!」なんて声をかけてくる白人の男がいた。私は一瞬「へぇ〜、キィーコーマツムーラねぇ」なんてぼやっと聞いたが「えっ?それって誰?なんで?」でっ、そう声を掛けてくれた人を見ても「えっ?誰?私がそのキィーコーマツムーラですけど?」って引きつった顔でみてると「ニックだよ!ユーアーマイ ブローカー」って言われて、はっ!と気がついた。ニックってあのニックじゃ〜ん!えっ?でも全然顔に印象がなかったよぉ。そ〜だ、ニックってなんかあまりにも普通で顔を思い出すのにも3分はかかってしまった。あの時自分がニックのファンだったってことすら今では記憶から消えていたけど、急によみがえって来た。そうだ、あのときのニックだ。

 ニックから初めて私に連絡が来たのは私が不動産を始めて間もない頃だった。何故、彼がニューヨークでの不動産購入のブローカーとして私を選んだのかは分からない。その理由は聞いたこともなかったから今となっては真実を確かめる事ができないが、きっと彼は私の所属しているコーコランのウェブサイトで、私の中国人系っぽいなんかやり手でっせ〜っていう顔写真をみて連絡してくれたんだと今でも思っている。その時、ニックはカリフォルニアに住んでいて近いうちにニューヨークに引越ししたいけど、レントするのはなんだか月々の支払いが無駄な気がするから出来れば購入したいと言った。そうであればと私は、ニューヨークのマーケットを話をして、どういう物件をターゲットに検索するべきかを提案した。ニックはジャズ・ミュージシャンで不動産購入の際の希望は、重いなんとかという楽器を電車で運ぶ可能性が高いから、エレベーターがあるビルということと、駅に近いことだった。物件を探すにあたって、ニューヨークに住んでいる人にすら、ブルックリンのどのエリアがいいですよと説明するのは困難なのに、ニューヨーク初心者の彼にはなおさらブルックリンの土地勘はないだろうということで、とりあえず予算内でとにかくいろんな物件をありとあらゆるエリアで見ていって、それで気に入ったエリアが決まり次第、条件のととのったところに縛るというプロセスが一番いいと思い、そうすることにした。

 1週間くらいメールや電話で連絡を取り合い、ブルックリン・ハイツ、パークスロープ、キャロルガーデン、フォートグリーンとブルックリン初心者ならならとりあえず押さえたいというエリアを紹介した。1週間毎日のように、あ〜だこ〜だとまるでボーイフレンドとのようにマメに連絡を取り合っていたため、初めてオフィスでニックに会ったときには、あぁ〜ニックね。って感じであまりはじめましてぇ〜という印象ではなかった。ニックは私と同じくらいの年頃で独身のジャズ・ミュージシャンだった。カリフォルニアで過去に3度不動産の売買をしたことがあり、私にいわせればプチ不動産投資家で、現金を$300Kくらい持っていた。その$300Kの利益というのも、不動産投資をしようと思っていたわけではないけれども住む目的でそこにアパートを購入し、移動、そしてまた購入ということを繰り返し引越しをしているうちにまるで「わらしべ長者」のごとく知らぬ間に$300K近い現金を手に入れていたそうだ。今回、ニューヨークに引っ越そうと思った理由を、自分のミュージシャンとしての新たな挑戦と家族がボストンにいるということから、やはりニューヨークに落ち着くべきだと考えたと話してくれた。

 ブルックリンハイツ、パークスロープと一応、便利だと思うところを見たが、彼は別に自分はヒップ生活をするような柄じゃないからもっと普通のエリアがいいと言ってきた。ニックはとことん控えめだ。普通ねぇ〜、普通のエリアといわれて、駅に近くてマンハッタンにもそんなに遠くなく300Kでできるだけ生活しやすいところねぇ〜・・・と考えた末、ケンジントンも見てみることにした。すると、駅から3分くらいと近く、エレベーター付き、しかもJr.4といわれるワンベット・ルームが$250Kであった。私も意外な掘り出し物に興奮し、ニックも気に入ってくれた。しかも、最初は$300Kくらいの物件を購入してあと足りない分はローンを組もうと考えていたが、これならおつりがくる。オーナーもニックが現金で購入するということに安心感を覚えて$245Kでオファーを受けてくれた。早速、ボードパッケージを整えて、いざマネジメントカンパニーに提出し、ニックはこれでニューヨーク移住計画完了!ってな具合に安心して、ボストンの実家に寄ったあとサンフランシスコに戻って行った。

 かれこれ2週間、いや更には3週間待ってもマネジメントカンパニーのエージェントからニックのボードインタビューの連絡が来ない。勿論、その間私は何度と彼らに連絡をとるのだが、いつも忙しいだとか、すぐに連絡するよという返事しかこない。途中、脅したくなったがここで私がいらいらしたところで何の解決にもならない、それでも何か気になること、または追加しなくてはならない資料があるなら言ってくださいねぇ、とあくまでも営業スマイルで対応した。ある日、いつものごとく「でっ、何?まだ?」という感じで連絡をすると、ミュージシャンってのはど〜ゆう音楽をやってるのか?と3週間くらいほったらしにされた挙句にそんな質問をしてきた。だから、こういうものですが何か?というのりで私はニックに頼み、彼が今までに紹介された雑誌の切り抜きや、TV番組の名前、更には今までに競演した事があるアーティストの名前をもらった。それに彼のCDもパッケージに加えた。まず、ミュージシャンだから嫌だとかなんだって言われる筋合いはないが、そういうのならば別にこっちは何も隠し事をする気も偽造をする必要もないため、素直に聞かれたこと全てに説明書きをした。ところが、一週間もしないうちにニックをコープのメンバーとして受け入れられない言ってきた。

 はっきりいって私は唖然とした。そういうニックも唖然としただろうが彼は常に冷静だ。私はというとひたすら、意味不明だと怒っていたが、ニックはというと断られたのなら別にお願いしてまでも購入する気にならないと、サラッと言ってくれた。今、こうして時間を短縮してあったことを書くと「へぇ〜、ふん、ふん」とサラっと読めてしまうが、不動産という一大財産を購入するときには誰でも力が入るもので、サラッと事を見逃す人などほとんどいないのが現実だ。なのに、何故かニックは平常心だった。これで意気消沈してきっとニックも、も〜いいよと言ってくるのかと思いきや「じゃ、別に自分が買えるところあるかな?」という非常に控えめな質問が来た。私はどうしてもニックに「ケイコのおかげでまたいい財産を得ることができたよぉ〜、最高だよぉ〜、ありがとう」って、いつか言ってもらいたいが為に必死にグッド・ディールを探し求めた。その間、ニックは相変わらずサンフランシスコにいて、自分の不動産購入の全てを見知らぬ私に任せてくれた。

 ある時、少しニックが思うところからは遠いかもしれないけど、しかも少しお部屋が小さいけどビルの感じが明るくて住んでる人もなんか、あれ?こういう人がここに住んでたんだぁというようなニュージェネレーションっぽい、ヒップじゃないけど会社勤めというよりは自営業ぽい感じを受ける人が多く住んでるビルを見つけた。そのビルにはニックが希望していたエレベーターがない。でも一軒だけ売りに出ていた物件は、1階の物件だった。しかも!価格は$110Kとぐ〜んと安い。人に言わせれば疑わし程安いから何か事情があるんだろうとか思うだろうが、特に怪しい事情はない。ただ単に$300Kくらいのものを探していたからそれ以外の価格の物件を注意してみていなかっただけだ。お客さんの最初の予算が$300Kだったとしても、最終的に$400Kのものを買ったという事もあれば、こうやって全く桁違いに安い物件にめぐり合う事もある。

 早速ニックに連絡し、怪しいくらいに安いけど、なんてことはない1階ということと、今まで探していたエリアよりも5分くらい駅から遠くなるだけだと説明した。ニックはどうみてもギャンブラーには見えない。いつでも至って平常心を保っていて、そんな彼がミュージシャンとして人前に立つときはどんな顔をしているのだろうと、想像してしまうほどだ。笑顔で演奏してるのかな?と他人の私が心配になってしまうくらいにシャイなアメリカ人だ。なのに見たこともない物件をケイコがいいっていってるならそれでいいよと言ってくれるなんて、シャイだけどちょぴりギャンブラーな彼だった。勿論それだけ私を信用してくれてるのだろうけど、絶大な信用を得てしまっている分、いやぁ待てよ、もう一度だけマーケットを見て、それでもなお得なら、とりあえずニックのニューヨークライフはここから始めてもらおう。それで、彼がもっとミュージシャンとして成功を収めた暁には別の物件を購入すればいいじゃないか。その後、2、3件似たような価格のものをみたがどれもピンと来ない。広さや駅の近さはなんだか悪くはないがビルから出るエネルギーが最初に断られたあの物件みたいに「なんかミュージシャンって嫌いよ」というオーラを出してる気がしてならなかった。結局あれよあれよという間にニックはこのケンジントンの$110Kのワンベッドルームを購入した。

 やったねっ!ひゅ〜!クロージングの日に私は一人でハイになって喜んだが、これまたニックは冷静というか正常心を保っている。私はニックの追っかけになってニューヨーク中のライブに行きまくるから絶対に連絡してね!といって別れたのに、その後、彼は一度も私に連絡をしてこなかった。そのうち私も忘れて、7年たってはじめての再会となったのだ。ニックはよく私を覚えていてくれたなと思う。私は99%のお客さんの顔と名前を覚えている。だってそれぞれのお客さんとはいろんな思い出があるから大抵は忘れない・・・。なのに忘れた1%にニックがいたとは。どこまで彼は控えめな男なんだろう・・・。

 ニックにフルネームで名前を呼ばれて30秒はボヤッと彼の顔を眺めてしまった自分に対して私は恥ずかしくなってしまった。ちゃんと名前まで覚えていてくれたんだ。その後、エリザベスが来るまでの間、まるで昨日の事のように彼とアパートのことを話し始めた。当然だが7年もたった今は彼が$110Kで購入したアパートは2倍以上の価格がついている。その時はまさか更に不動産で利益を得るなんてこれっぽっちも考えていなかったらしいが、キィーコーマツムーラのお陰だよといってくれた。私の名前は本当は「キィーコー」じゃなくて「ケイコ」なんだけど、でも嬉しい!!いつもいつも私を信用して物件を購入してくれたお客さんには感謝している。それだけではなくってニックみたいに私のお陰でニューヨークライフ絶好調だぜっ!って言ってくれるなんて、私はとっても幸せ者だ。その後、アレックスのことばっかりじゃなくって一人でも多くのお客さんのお手伝いをしたらもっといいことあるよとエリザベスから言われて、長らく失いかけていた仕事へのモーチベーションがぐんぐん上がって来た。あの日、すっかり忘れていたニックに会えてよかった。人とのめぐり合いって不思議だ、だからこの仕事って面白い。それに人生も悪い事ばかりじゃないよね。


 

文/写真/情報提供 keiko Matsumura
Go to Keiko's website
おすすめ物件
エリア: ブルックリンハイツ
タイプ: コープ
部屋数: 2
ベッドルーム数: 0
バスルーム数: 1
特徴:

ガーデンが見えるお部屋

   
価格: $375,000
管理費: $618/mo
頭金: 20%
不動産に関する頼りになる人を紹介します
ルーズベルト・シャープ(モーゲージ)
名前: カズオ・ミゾグチ
職業: モーゲージコンサルタント
コメント from けい子:
日本語で親切に対応してくれます。
BACKNUMBER
不動産ブローカー物語り
2007/01/01 美男子ジョンの長くて険しい道のり
2007/02/01 継続は力なり
2007/03/01 ブルックリンの不動産番長
2007/04/01 ブルックリンの不動産番長(女番長編)
2007/05/01 自分のことって一番わかりにくものだけど・・
2007/06/01 やっぱり自分のことが一番わかってない!!
2007/07/01 わがまま娘が愛される理由
2007/08/01 続・わがまま娘が愛される理由
2007/09/01 出会うべくして出会ったひとびと
2007/10/01 出会いと別れ
2007/11/01 珍事件がつなぐ不思議な縁
2007/12/01 I Love Brooklyn♪♪♪
2008/01/01 恋は盲目。結婚はタイミング。不動産は・・・
2008/02/01 3度目の正直?!
2008/03/01 改装工事業者は、信用のおけない職業No1?!
2008/04/01 欲望は限りなく続く?!
2008/06/01 「産みの苦しみ」苦しみの後には喜びが
2008/05/01 「まさか自分が」のさらなる試練
バックナンバー一覧
NY不動産購入ガイド
Vol.1 仕事探しよりも、アパート探しの方が難しい!?
Vol.2 不動産ショッピングに向いているのは?
Vol.3 今度の週末はオープンハウスにレッツ・ゴォー!
Vol.4 オファーは最高の自分でアタック!
Vol.5 震える手でサイン!いよいよ契約へ!!
Vol.6 誰も教えてくれない?!住宅ローンのお話。
Vol.7 ボードパッケージの準備で自分を見つめ直す?!
Vol.8 素直な気持ちで挑む。ボードインタビュー!
Vol.9 主人公は自分!ボードからの承認待ち。
Vol.10 喜びもひとしお!クロージングの日。
Vol.11 不動産を購入するなら今!なその訳
*不動産に関するご質問、けいこさんへのお便り、このコーナーについてのご意見・ご感想などをお送りください。こちらのコンタクトフォームからどうぞ。
ホーム | 広告掲載について | 個人情報 | 免責事項 | お問い合せ
Copyright © Heliopolis Systems Inc. All rights reserved.