NYの日系コミュニティガイド
NY EVENT
Vol. 28  「まさか自分が」のさらなる試練
2008/05/01 UP

   「試練」が女を磨くのよっ!と数々の試練に遭うたびに、そう自分に言い聞かせていたが、本日の私の気分は女なんて磨かなくて結構。もうあまりにも試練に遭いすぎてピカピカでございますって気分だ。最近の私の願いはというと、人としてただただ地味に日々を重ね、できればゆっくりと時を過ごしたいというもの。
 
 4月も終わりというのに、私はまだ年末に購入することになったベイ・リッジのアパートに引越ししていない。先月の原稿を書きながら、なんとなくだけど、きっと今月号では、なんだかんだとありましたが、お蔭様で引越しも住み、狭いながらにキッチンの窓を開け、お料理をしたり(今まで、したことはないがこれからしようかと本気で思ってる)して、新居をエンジョイしています!と報告できるのでは、と夢を膨らませていた。初めてのマイ食器洗い機や、氷がドアのところからダーとでる冷蔵庫、そしてマイ洗濯機のある生活を、おほっ、ほ〜!と鼻高々報告するつもりだった。なのにぃ、な〜ぜ?(歌)(君の行く道は、果てしなく遠い。。。急にこの歌を思いだしたがなんとも滅入る歌詞じゃありません?)

 そう、報告どころか、現在工事は中断してしまい、私の新居となるはずのアパートはちょっとしたお化け屋敷みたいになっている。自分のアパートをお化け屋敷なんていうのはなんだが、どうしてかというと、ペンキはやりっぱなし、しかも塗れてる部分やそうでない部分があったり、キッチンの壁は剥き出し状態。とにかくやりっぱなしの状態というのは、まるで事情ありで夜逃げした家族、そこに霊が住みつき荒れ放題。う〜怖い!でも、本当に怖いのは汚いアパートでも、霊でもない。何が私を怖がらせるかというと仕事をほったらかしにしてしまう「知り合い」の(のはずだった)アレックスだ。長年、不動産ブローカーをやってきているなかで、数々の改装工事の悲劇を私は知っている。それなのにどうしてこの私が自らこの試練を受け入れてしまったのか。よくある話だけど、どうやら「まさか自分に限って」と思ってしまっていたようだ。

 例えば、よくあるのは、「インターネットで知り合った人と付き合う人って信じられない」と断言していた友達から「実は今の彼はインターネットで知り合ったの」と打ち明けられたりだとか、「自分の旦那に限って浮気するなんて思ってなかった」とか、または逆のパターンで「不倫する人って軽蔑してたけど、まさか自分が不倫するとは思わなかった」というような話。世間にはこんな「まさか自分が」の体験談がわんさと転がっている。そうなのだけどー。。。でも、「まさか自分が」改装工事の業者にドロンされるとは思わなかった。しかも、「知り合い」の(のはずだった)アレックスがドロンするなんて、思ってもみなかったのだ。

 アパートの改装工事業者を決めるまでの成り行きは、3月号のお話を読んでいただくとして、アレックスに工事の依頼をして実際に工事に取り掛かったのは1月の終わりのことだった。彼と工事の契約をするときに、最初の手付金を支払った。これは後から聞いた話だが、こういった改装工事の手付金の金額は、一般的には最終価格の5%くらいを支払うそうだ。それは日本人で主に商業デザインをする友人から聞いたのだが、もしそれが近所の改装工事屋でも最初に10〜15%くらいの手付金を払うというのが妥当らしい。そんなことは2ヶ月もあとから知ったことで私はいずれ渡すお金なんだからと、アレックスに請求された通り、手付金として費用の30%の現金を渡した。しかも何故わざわざ手付金を現金で渡してしまったかというと、現金で渡してあげたほうが、彼も節税とかで助かるだろうからという余計な親切心からだった。「私のためにお仕事してくれるのだから」と思い、なるべく彼にも親切にしてあげようと思っていたのだけど、なんとも勝手な勘違いだったらしい。今、思うとそりゃあんたの仕事でしょ、現金だろうが小切手だろうがクレジットカードだろうがアメリカでは「支払い」に代わりないわけよ。といえるのだが、何度も言うが私はこんなに態度と体型がアメリカ人化しても、マインドはいつもジャパーン!という面倒な人間だ。どうしても、「こんな私のために申し訳ない」とか「わざわざ何かをしてもらって有り難い」という気持ちになりがちだ。だから少なくとも私にできることはチェックでなく「現金」で代金を支払えば彼も助かるだろうと、ちょっぴり私のいけない親切の押し売りをしてしまった。

 そんなこともあって、知り合いでありながらもアレックスは私の足元をみていたのだろう。最初の手付金を払ったあとは、待ってましたとばかりによく働いてくれたのだけども、その後、作業のペースは段々と落ちていき、私は毎日のようにアレックスをおだてつつ、ちびちびと作業をする彼にいらつきながらもマリア様の気持ちで見守り続けた。ついには、作業が中断してしまって、そのたびに少しずつ追加の支払いをしては、少し働きということになってしまった。2度そういうことがあって、とうとう今現在は作業が完全に中断してしまっている状態だ。作業が中断するたびに他の業者に工事を引き継いでもらえないか相談に行ったのだけど、そのときに言われたことは、これまでに終わっている作業は全体の20%ほどなのに、私が50%近く支払いを済ませてしまったいるので、アレックスに50%まで作業をしてもらわないとアレックスに支払った分は損になってしまうというものだった。もうお金を渡してしまっているのは私の責任なんだから、アレックスをおだてまくってこれ以上何があってもお金を渡さないでどこまで成果を上げれるかがんばれっ!と、逆に応援されてしまった。その改装業者が言うには、とにかく改装業者というのは現金をちらつかせた時点で次の仕事をもってこようとするから、もらった分の仕事は「お金を払ってもらったから一生懸命やろう」というのではなく「支払ってもらったリラックスするべ」というマインドらしい。それって違くない?と私は思うのだけど・・・。だから彼らを必死に働かせるためにはお金を作業が終わるまで支払ってはいけないとうのが一般的な常識、または改装工事成功の秘訣らしい。

 まぁ、アレックスと改装工事の契約を交わし、最初の手付金を払うにあたって、最初に30%分くらいの手付金を払うのはきっと一般的なことなんだと私が勝手に決め付けて、とくに誰に相談するのでもなく、慎重になることもなく事を済ませたことは事実だ。改装工事業者を決める際のポイントは「価格」と手際のよさだと思う。当然、時間がかかる作業であれば値段も上がるわけで、業者に提示された作業にかかる時間数と値段が自分が思っていた価格と一致すればそれで良しでしょ、と決めていた。と言っても、どの業者からも私が最初に提示した価格は安すぎて無理だと一度は拒否されたのだけど、3人会った業者が3人とも口を揃えてそう言ったからそれは業界のお約束であってあまり意味がないと思っていた。それでもアレックスだって仕事を引き受けて契約書にサインをしたのだから、契約の内容、要するに作業にかかる時間とその価格を承諾した上での契約だろうと私も理解していたのに。

 最初の手付金を払ってからは、ちびちびと作業をしていたアレックスだったが、その後作業を中断しては追加の支払いがないと作業を続けられないようなことを口にした。私は毎日のようにアレックスを子どものようにおだてつつ、なんとか作業を続行してもらえるようにがんばってはみたのだけど、おだてるのにも疲れ果て追加のお金を渡してしまった。「我学ばず!」私は決して男に弱いわけではない。どちらかというと弱い者には弱く、強い者に対しては強気だ。だから全体的に子供以外の男に私は強気だ。時には無意味に対抗意識を燃やしたりもする。依って、アレックスが私好みの男でも、若くてかわいい男で思わず守ってあげたくなるタイプでもなんでもない。ただ私は目的を達成させるまでは比較的がむしゃらになりあまり他人の言葉を聞き入れない悪い癖がある。だからただひたすらアレックスをいかに上手く操るかがマイブームになり、改装工事業界の一般的な基準などは聞入れないで、私はわたしぃ、カモメはカモメ(By 研ナオコ)で、私の予想をはるかに超える改装工事業者の常識というやつを操ろうとしていた。ジャン!その結果4月も終わりだというのに全く作業は進んでないじゃないの。

 絶対にお金を渡すなといわれつつそんな言葉に聞き耳も立てず私は2度アレックスにお金を渡してした。それでも渡した次の日はアパートに現れては、あれよこれよと作業をやっていたようだが、床の掃除をしてる間にきっと5時間はたっていたと思う。そして、段々と連絡が途絶えてしまった。最初のうちは連絡が途絶えると、次に電話で話すときはなんだかんだと言い訳をしていたがそのうち言い訳もなく開き直ってきた。。。と、思ったらなんと一週間以上連絡がとれなくなっていた。私はもう1ヶ月以上前には引越しをする気満々でいたから、生活用品は全てダンボールにしまっていた。ここ何週間か毎週末のように友人に「今週こそは引越しするからさぁ、よかったらお手伝いに来てよ」と誘っては、「でっ、ここの何をどうやってしまうわけ?」なんていわれて、「もう、使わないからがんがんしまっちゃってよね」という意気込みで答えていた。というわけで、3週間以上前からはとうとう何か必要なときはダンボールから出し入れするという生活になってしまった。中には、もう使わないから引っ越すときには、近所のホームレスにあげようと思ってダンボールにまとめて入れておいた食器やお鍋を引っ張り出して使うこともあったりで、情けないやら。

 話は少しずれるが、今私は長年住んだブルックリンハイツの家を出て、新しいアパートへ移るまでの間仮のアパートへ住んでいるのだけど、その近所にいつもいろんなものをスーパーのカートにいれて運んでる男の人がいる。私に言わせればホームレスなのだが、彼は勝手に(だと思う)人の家の庭、というか敷地に住みついてる。なんというか要するにそこを拠点にしているらしい。最初に彼のことを見かけたとき「げっ、怪しい」しかも、じっとこっちみてるし。どうしよう。アパートに戻ってきて無愛想な私の犬がいなくなってたりしたらと心配になって、彼がそこからいなくなるのを待って外出した。次に彼のことを見たときにもなんかいつも私のことをみている気がして「怪しい!」とうとう私にも「強盗」という魔の手が忍び寄るのかと心配に。思わず、警察に電話しようと思ったが、いったん隣の住人に電話してみた。「近所にホームレスがうろついてて私が外出してるのを見てるんだけどどうしよう」というと隣の住人のトニーは「あぁ〜、あそこに出入りしてる人でしょ?大丈夫、彼は3年くらいあそこにいてみんな知ってるから」という返事だった。彼がホームレスなのをみんな承知で近所に出入りの許可をしているらしい。身なりは当然ホームレスだが、このブルックリンの凄いところは、ホームレスに近寄るなというのではなくてできる限り彼が悪いことをしないでも生活していけるように(生きていけるようにといったほうがいいかもしれない)家で不要な品は彼のいるところにもっていってあげてるらしい。そうすれば彼はそれを売ったり、物物交換をして生きていける。要するにわざわざ誰かをだましてお金をとったり、強盗をしないでも生きていけるだろうという近所の人の心遣いらしい。ブルックリンハイツだったら少しでも怪しいルックスの人がいようもんなら警察が移動してくれていたので、コミュニティぐるみでホームレスの人を助けてあげていたとは思いもよらなかった。

 最初は不気味だとか思っていたが、その話を聞いてだんだんと私も何かにつけ不要な品がでると「これ使うかな?」などと彼のことが頭に浮かぶようになった。そして彼が好みそうなものを家の前にそっとおいていく。彼が特に好む品はなんと電気のコードとか家電らしい。とにかく彼の敷地(?)をのぞいてみると私に言わせるとやたらと「固い」ものが多い。例えば、携帯のぬけがらみたいなものや、どうみても途中できれてしまっているちぎれっぱなしのコンピュータ系のコード。それらを何の目的かはしらないがよく一本づつならべて真っ直ぐにする作業をしている。まぁ、誰に頼まれたわけでもないだろうが彼の中では今日するべきことの一つになっているのだろう。そうやって彼は一日をその道に座って生きている。夜になると一応、人の目につかないようにとよそ様の家の敷地にそっと入っていく。私はこの仮住まいで相当無駄遣いをしていると反省したが、全てのものが彼のとろこでどうにか役にたつと思うと少しは気がまぎれるというものだ。とかなんとかいって友達に彼の話をして気をそらしたところでみんな「でさ、引越しはいつ?」と聞かれてしまう。自分のことなのに何もわからないとは。私がわからないで誰がわかる?ノーバディー。。。。ホームレスに何をあげようかとか、新しいアパートのカーテンは何にしようかなどを考えながら毎日なるべく時間をつぶしていらいらせずにアレックスを待とうとしたがとうとう4月も終わり、私の我慢は限界になっていた。

 最後にお金を渡してから工事の現場にアレックスの現れる回数が減ってきた。もしかして今日は仕事に来たかな?と少し期待してアパートに行くのだが全く来た様子がない。彼が私からドロンしたんだと気づくまで3週間以上かかった。そんなもん3日で気づけ!!と自分にいいたいが気づきたくなかった。それでもきっとアレックスに何か事情があるのだろうと勝手に思っていた。弁護士にも相談してみたが、要するにお金をもらって仕事をするのが面倒になったんだと言われた。ドキッ!要するに私は泣き寝入りをして「なんて私はバカだったの」と生涯いじけつづけるか、訴訟を起こして「アレックスよ、目をさませ」と言うしかないと相談した弁護士に言われた。私が利口ではない事は確かだが、自分のバカさ加減をこれから何年間悔やむことになるのだろうか?本当に私は間違っていたのだろうか?そのことを考えるといてもたってもいられなくなり、なんと「訴訟」してみることにした。これまで訴訟なんて自分とは無縁だと思っていたし、アメリカ人ってやたら訴訟とかして「信じらんな〜い、この国」とかいままで散々軽蔑していたのに、まさか自分がその立場になるとは。でたー、「まさか自分が」体験の第2弾!来月からは次なる「まさか自分が」体験をリアルタイムで報告いたします。

文/写真/情報提供 keiko Matsumura
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コメント from けい子:
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