NYの日系コミュニティガイド
NY EVENT
Vol. 26  改装工事業者は、信用のおけない職業No1?!
2008/03/01 UP

 突然ですが、今、私は現実と真っ向から向かい合ってます。だいたいなんで自分の身にこんな惨事が舞い降りてきたのやら・・・。自分の非を認めることをしないアメリカ人的に(と言うか、ニューヨーカー的にと言うべきなのかな?ニューヨークって自分の非を認める人って、断然少なくないですか?!)、どうしても自分が悪かったのだとは思えない私。なぜこういう状況になってしまったのか、その原因を探ってみては、ここはニューヨーク、「眠らない街」だからと街のせいにしてみたり。それでも、賃貸に出すことのできないおんぼろアパートを買ってしまったというこの状況を、なんとか把握しようと奮闘中であります。ニューヨークの人たちは、9.11の時だってテロの攻撃をされたって忙しくって恐れる暇がなかったと思う。ネブラスカやカンザスの人は未だにテロを怖がって震えているのかもしれないが、ニューヨークの人は今日の事に忙しくて明日またテロが起こるかどうかなんて心配をする暇はないのだ。そう、ここはニューヨーク。少しでも立ち止まると現実に置いてけぼりを食わされる。

 本音を言うと、こういうことは計画的に慎重に行動していれば、後で「あれれ?」というような事態を招かずに済んだのかとも思うが、でも私の場合、どんなに計画しようがきっと結果は同じことになってたのかもとも思う。だから、これは自分で招いた「惨事」ではなくて、変化のために自分の型を作り直す時期が来たんだと前向きに受け止めることにした。だから今また自分の型作りからはじめている。ニューヨークでは、みんな「今」のことしか考えていないから、明日や未来の話ばかりをしていると煙たがられてしまう。そういうことで私も、あんまり未来のための計画にこだわらず、いま現在のことだけを考えていこう、と思う。

 何はともあれ、今ある状況を把握するためには、現実と向かい合わねば。まず最初の現実は、このおんぼろアパートの改装工事に一体いくらかかるのかということ。これまでに4人の改装業者と会って話をしてみたが、改装業者に私の買ったアパートを改装するのにいくら必要かという質問をしても無駄だということを、3人目の業者に会ったときに悟った。ニューヨークに長く住んでいれば、もうすでに当たり前の常識として身についているべきことなのかもしれないが、私にとっては閃きだった。3人目の業者と値段のことを話しているときに、いくらかかるかと聞かれてもわからない、いくらまでなら出せるんだと言われたのだ。

 どんなにニューヨークに長く住んでいても「三つ子の魂百まで」。私は根が日本人なんだとつくづく呆れてしまうのは、値段の交渉が凄く苦手だということ。日本人は皆、値段の交渉が苦手とは言わないが、少なくとも私が日本で生活していた時はお金の交渉をするという機会はなかった。会社に行けばみんな決められた給料を貰い、ボーナスも働きが多かろうが少なかろうが決められただけ貰う。だから、アメリカの会社みたいに自分の働きぶりをあからさまに上司にプロモートする必要もなく、日本ではコツコツと働くのみだった。自分のお給料を交渉するなんてことは考えることすらなかったと思う。

 それに、今では少し変わってきているのかもしれないけど、日本では最初からお金の話をすることを恥とする文化があると思う。多くの人が人前でお金の話をすることを嫌うし、お金の話を切り出すのが苦手だ。私もそうだと思う。ニューヨークに20年近く住んでいても、いまだにお金の話をするのが苦手だ。なので、改装工事の業者の人と話をするときは、できれば相手のほうからこれくらいの費用がかかりますというのを提示してくれるのを待っていたのだけど。どうやら、こっちからいくら出したいのか、出せるのかをいうのを伝えないといけないらしい。業者の人はそれを聞いてどの程度の改装工事ができるのかを検討するようなのだ。私は勝手にこの程度のアパートはこれくらいの値段を出せば一般的なんじゃないですか、と相手が言ってきてくれることを望んでいたのだけど、それは無謀だった。まずはこちらの予算を明確にしないと、相手も返事をしずらいみたいだ。

 改装工事の費用も2000万円のアパートに2000万円かけて改装することも可能だし、3000万円かけることも可能だけど、あなたはそのアパートの改造工事に2000万円をかけるつもりですか?ということを業者の人は聞きたいらしい。そして最も業者が知りたいのは、実際に2000万円だせるのか?とうことだ。だから、私が2000万円で購入したおんぼろアパートに、私は改装工事の費用としてさらに2000万円を出せるのか、それとも300万円しか出せないのかを伝えなければならなかった。私は騙されてアパートを買った気分でいたから本当はこんなもんどうにでもなってしまえとう投げやりな気分だったが、店で履いたときはぴったりだと思って買った靴が実はきつくてもう履けない、だからもう二度とこの靴は見たくないというレベルの問題じゃないんだということを改めて思い直し、真面目に取り組む事に決めた。そして、4人目の業者に会ったときには予算を提示して、あたなはこの予算内でどれくらいのことがどれくらいの期間でできるのか?と聞くことができた。(でも、いろいろとそれ以外の問題は出てきたのだけど・・・。)

 私はファッションには敏感な方で、バックや靴の値段はだいたい把握していて、どんなものにはいくら出したいという強い意志があるわりには、生活の「質」を決めるアパートの中のものに関しては今まで拘った事がなかったので、いったい何がいくらくらいなのか検討もつかなかった。例えば、天井の電気をひとつ買うのにも、ホームデポで60ドルくらいで購入できるのに、インターネットで検索してみるとたかが天井の電気といえどもその100倍はするだろうと思われる6000ドルくらいする電気がわんさとあるじゃないの。生まれて始めて冷蔵庫やガスレンジ、洗濯機というような家電のショッピングをしてみて思ったのは、ガスレンジも400ドルくらいのから3000ドルのものがあるということ。勿論、あきらかに400ドルのに比べて3000ドルのガスレンジをみると「うわぁ、これなんか料理できそう」と思うようなルックスなのだが、ベイリッジのワンベッドルームのアパートを購入しようと思う人に何人3000ドルのガスレンジを使いこなせる人がいるだろうか?それなら、400ドルのガスレンジを買って残ったお金で、500ドルのIkeaソファではなくてデザイナーもののDWR(Design Within Reach)3000ドルのソファーを買い、大して広くないリビングにドンッ!と置くほうが、よっぽどアパート全体の質がグッと上がるというもの。だって、明らかにクッキングしてる時間よりも3000ドルのソファーで寝転んでる時間の方が長いし。。。こうやって自分ならどうするということも考慮に入れつつ、将来の買い手のライフスタイルをも考えながら、改装工事の質を決めていった。でも、ここで質に拘っていてはアパートに出した価格と同じくらいの改装費用がかかるということが分かり、とりあえず近い将来売りに出すことを考えて、流行りと思われる「スタイル」を使い、質はとりあえず後回しにしようと決めた。

 さっき、最終的に改装業者を決めるまでに4人の業者と会ったと書いたが、その間にたまたま昔からの友達と食事をしていて改装工事をしようとしているという話をしたら、自分の父親に頼めば?と言ってくれたことがあった。彼とはニューヨークに住み始めたときからの親友で家族ぐるみのお付き合いだ。ソーホーで生まれ育った彼のお父さんは、40年近くソーホーのロフトに住み、レストランなど商業用のデザイン・建築をしている。そんな人に自分のちっぽけなしかもベイリッジのアパートなんて悪くて頼めないと一度は遠慮してみたが、彼いわくお父さんはもう歳だから仕事をしたりしなかったりで好きなときだけ仕事をしてるとのこと。だから暇つぶしにさせたらいいよと快く言ってくれた。早速、その夜、彼のお父さんに電話をすると次の日に見に行くよといってくれた。私も一流のデザイナーである彼に頼むなんてとっても恐縮だと思ったけれども、アパートを見てもらうとさすがは「本物」のインテリア・デザイナーだ、彼はあーだこーだと私の目が覚めるようなデザインのアイデアを話してくれた。お金も終わってからかかったぶんだけ出してくれればいいといってくれた。私は感激して、12月の半ばだったが購入を決めてから何ヶ月間か「ちぇっ、騙されたよ」と思ってずっと暗くなっていた気分がパッと明るくなった。そっか彼に頼めば一見落着だ。とっ、思って待つこと4週間(長いっ!)その後、年末だった事もあり半ば定年退職している彼はバケーションに行くだとか、昔の友達にちょっとした改装を頼まれたといって私のアパートは2の次にされてしまった。もう、1月も半ば、いい加減に工事を始めないと駄目だと私はとうとう堪忍袋の緒が切れてしまい、せっかく勧めてくれた友人には悪いと思ったが、私には「生活」する場所が必要だからこれ以上待てないと言って断った。実は断りつつも心の底では、彼の方から悪かった、明日からとりかかるよと言ってくれることを期待していた。ところが、「そっか、ごめん」以外は何も答えがなかった・・・。勢いで断ったのはいいが、そしたら次ぎに誰に電話するべきかなんて考えてもいなかった私。しょうがないので、以前に私の住むビルのスーパーから紹介された若い改装工事業者のアレックスに電話をしてみた。彼ならどうせ暇だろうから急な仕事も引き受けてくれるに決まってると思ったからだ。「明日」から工事をしてくれと頼んだ。もうこれ以上待てないという無計画の極みを行く展開だが、またまた私のこの無計画さが私を不幸の道へとずりずりと引き落としてくれたのだった。

 4人目の業者がアレックスだった。彼はスーパーの紹介ということと、私が住むアパートでたまに仕事をしているのを知っていたということもあり、彼だったら何かあっても文句も言いやすいし、知り合いの知り合いとうことでそうそうおかしなことも起きないだろうと思っていた。それでもどうしてアレックスに会ったときに彼にすぐに頼む気にならなかったかというと、話をしていてもお金の話ばかりで、私の予算がいかに少ないかということばかりだったからだ。何度も質じゃなくて見た目で勝負するのだということを、例えばこれにいくらかけるならここにいくらかけたいという具体的な例を出して説明しても、ピンときていない様子が伝わってきたので、もう少し様子を見ようと思っていたのだ。それでも、友人のお父さんに頼む話がボツになったおかげで1ヶ月もほったらかしになったアパートを目の前にして、もうこれ以上様子を見る余裕もなくなり、アレックスに頼まざるを終えくなっていた。

 いざ、工事を始めてもらうときに私は、彼がしきりにお金の話をするから、やっぱりすぐに動いてもらうためには、こういう若者には現金をちらつかせて動機を上げないとなかなか動かないだろうと察し、彼に最初に1万ドルの現金を手渡した。これで明日から始めてよねっ、と。。。次の日、アレックスは喜んでマネジメントカンパニーに工事の許可を取ったり、スーパーに工事の日程を報告したりと忙しくしてくれた。これでもう1ヶ月もしたら工事が終わるんだ、そしたらとりあえずアパートの出来具合をみてこれからのことを考えよう、と思ったのも束の間。1万ドル渡してテキパキと仕事したのは次の日「だけ」で、なんとその次の日には電話をしても音沙汰がない。でたぁー!もうお金を渡してしまった以上、彼にこのまま任務を果たしてもらうしかない。ガッツでアレックスを探し当て、3日後にやっと工事にとりかかってもらった。

 工事が始まり、キッチンとリビングの間にあった壁を取り除いてオープンキッチンにして、なんて考えていた私の横で、アレックスは私のアパートには普通は壁の中に入ってないといけない電気のコンセントが全部壁の外に出ているから全ての壁を取ってその電気のコンセントを壁の中に入れるべきだと言いだした。言われてみると確かにオフィスではたまに見かけるような感じで電気のコンセントが壁の外にあるではないか。前はなにかのオフィスとして使っていたのかな?と思うくらいに、やたらめったら壁のありとあらゆる場所にところ狭しと電気のコンセントがとびでてる。アレックスに言われてみて初めて気がついた。全体的にアパートがぼろいすぎてそんなに細かい事にまで目がいかなかった。アレックスいわく、この壁をやり直すのは予算に入ってなかったから予算よりも高くなるけどどうする?・・・って。どうするってお前、どうしてくれるんだよっ!とコンセントが飛び出てるのはアレックスのせいでないことは十分承知なのに、私はアレックスに対してカンカンになってしまった。

 その後も何かと事あるごとに私はアレックスをどなりつけている。最初は見た目以上にビッチだと思われるのも嫌だから怒ってしまった後にはフォローしていたが、実は2月も終わりの今だに工事が終わっていないこともあり、その間どんだけ私がアレックスに怒鳴りつづけているかは簡単に想像できるだろう。もう、怒り狂ったチャイナタウンのおばさんと思われても構わない。彼らに優しさの押し売りももう要らない!ニューヨークにいて何がたびたび人を怒らせるかというと、普通の事が普通に出来ないことだ。それは弁護士だろうが医者だろうが同じことで、たまに「弁護士さんですよね?私の言ってる意味わかりませんか?はっ?」というような弁護士がいて呆れることも。弁護士とでもいらいらするような事があるのならば、ましてやもっと普通の人が働いている郵便局などに行こうもんなら、一度そこに足を踏み入れたら健康を害してしまうのではないかと思うくらいにいらいらさせられる事がある。車のセールスマンや、引越業者、そして不動産エージェントというのも信用のおけない職業の代表だが、私の中で今「信用のおけない職業ナンバー1」に輝いているのは改装工事業者だ。

 私のような無知な庶民から一度の改装工事でありったけのお金をとろうとたくらんでいる彼らが悪いのか、それとも、それを知らない私に責任があるのか?あまりいつもがみがみと怒っていては老化がターボ付で加速していくのが分かる。心を天使にして、あのマドンナの信仰するカバラの教えをいきなり自分に言いきかせてみる。「全ての原因は自分にあると。。。」そ〜か?そ〜か?アレックスよ、おめでとう。工事がべらぼうに遅れているのは君のせいではない、私のせいでございます。雪が降って、車が前に進めなかったのも私のせいでございます。ニューヨークにいてたびたび驚かされるのは信じられないような言い訳をよく耳にする事だ。日本にいたら会社に遅刻する人自体あまり見ないが(「見なかったが」のほうが正しいのかも。何せ20年前の話なので。もしかして今は平気で遅刻をする若者がいるかもしれない。。。)それでも、嘘とすぐにわかるような言い訳をする人はまずいないだろう。だいたい、日本ではそうそう電車が規定通りに来ないという事も少ないわけだし、何度も通勤途中で倒れた人を見つけるにも限度がある。ところがここでは、完璧にあり得ないような事を真顔で言う人がいる。

 例えば、私のお客さんでよく待ち合わせに遅れてくる人がいるのだが、彼女は平気で2時間くらい遅れる。遅れるだけならいいが(良くないけど)終いにはいい加減言い訳が通用しないだろうと本人が判断した日には、完璧に無視する(来ない)。彼女のよく使う言い訳は、電車の時刻の乱れが一番多いが、最近は一応、心臓が悪い事になっていて、私とのアポに行こうとするときに限り、救急車で運ばれたり、気絶したりするそうだ。なのに、カラオケに誘うとちゃんと時間通りにくるじゃないの。何故?まぁ、もう理由などどうでもいい。とにかく、アレックスもいつもありえない言い訳ばかり言っている。

 約束事を守れてないということで私はよくカンカンになって怒っていたが、約束は守ってもらったらラッキーくらいにしか思ってはいけないんだと最近では思うようにしている。何故ならば、約束は守るのが当然だと思っているのは根が日本人の私だけで、相手(アレックス)はそうは思っていないからだ。スーパーというお互いの知人の紹介の手前、アレックスもあとあと都合の悪い事にならないように、一生懸命、誠実に働くだろうと思っているのもどうやら私の思い違いのようだし。だって、アレックスの行動を見ていると、彼が紹介してくれた人の事や、最初に交わした「契約書」の事を気にしている様子は一切うかがえないからだ。またまた根が日本人な私は、まぁ、あなたってなんて不思議な人なんでしょうと、目をぱちくりさせてみたり、貞子の呪いのような目で彼をにらんでみたりするのだが、彼は痛くも痒くもない様子。アレックスよ、私を悲しませようが、脅そうが私は仕事が終わるまでもう現金を渡さない。何故なら渡したその日からまたあんたを追いかける羽目になるだろうから。だから早く工事を終わらせてよっ!!こんなアパートどうにでもなってくれぇ、捨ててやるー!といいたいところだがそうはいかない。だから私は自分で掘った墓に自分で入ろうと決め、本日もがんばってる訳だ。

 こんな感じにやっと改装工事は始まったのですが、今月も引き続き奮闘中のご報告でした。来月こそは、実は失敗だと思って買ったアパートが、すごい資産に変わってたんですよぉ、オホオッ。。。なんてことになればいいんですが。こんな私にぜひ励ましのお便りを!

文/写真/情報提供 keiko Matsumura
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