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「できの悪い子、手のかかる子ほどかわいい」と大抵の親は言うけれど、サムの両親にとってサムはどんなに歳をとろうともかわいくて仕方がない娘のようだった。彼女のためにプロスペクト・パークにほど近いエリアに2BRのアパートを買ってあげてから、まだ1年とたたないうちに、今度は彼女の将来のために投資物件を買ってあげたいと言うのだ。まったく泣けてくるほどこの親はお人好しだ。サムはというと、相変わらず仕事に遊びに(たぶん遊びのほうが)忙しくしているということだった。なんだかんだといって、アパートを購入した頃は趣味以上、仕事未満という感じだった編み物も、彼女の作品を置いてくれる店が増え、最近では創作意欲にも熱が入っているとのことだ。でも、一度、いろんな色の毛糸で編んだ帽子や手袋、マフラーなどの作品を見せてもらったことがあるが、キャリアとしてはどうなのだろう・・・。と、他人事ながら、どうやれば趣味の枠から脱出しキャリアとして成り立たせることができるのか、しばしサムの編み物のキャリアについて真剣に悩んでみたが、うーん、私の本業は不動産なのだから、サムにはとびきりの投資物件を見つけてあげて、できれば将来は編み物以外で金銭的なフリードムを味わってもらうしかない!という結論に達した。
ということで、計画としては、サムのアパートがあるウィンザー・テラス近くの地域に絞り、2ファミリー以上の家を購入する。その物件を賃貸に出し、近い将来その近辺の価格が上がり次第、売却。または、親の希望としてはそれくらい(どれくらい?)近い将来に出来ればサムも結婚などして子供を産んだり、そして育てたりしている可能性があるから、家族でその家に住めばいい。というなんとも手回しのいい親だこと。。。
何件かそれなりの物件を両親と見てまわり、ついにサムのアパートにほど近い場所にマザー・ドウター・ハウスといわれるスタイルの家を発見した。このマザー・ドウター・ハウスというのは、読んで字のごとく母と娘の家(直訳だけど)で、同じ敷地内に大きめの一軒と小さい家がうしろの方に隠れて建っているスタイルの家で、このスタイルの家はテナントと大家が適度な距離を置いて生活できるという事から貸しやすいという利点がある。まさにこれは掘り出し物件!早速、サム様にも見ていただこうということになった。
久しぶりに会ったサムは、顔のヤンチャな表情がちょっとなくなった気がした。アポにあわられたサムは、たった今ベッドから出てきましたみたいなファッションに、ウサギ(かどうかは確かではないが)のような動物のふかふかしたスリッパを外で履き、一時たりとも時間を無駄にしたくないということで、手には編みかけのマフラーを持ってせっせと編んでいた。さすがサム。あいかわらず自由奔放に生きている。家の中に入ると、想像以上に状態もよく、使い勝手もよさそうだ。私とお母さんが興奮して、家の中を見学していると、突然サムが「あぁ〜〜〜」という声を出して何かを指差している。そして何か意味ありげに笑ってる。指指しているさきには、使い終わったお砂糖の袋が捨ててあるだけ。私にはそのゴミの意味が全くわからない。それで?という顔をしてると、サムいわくこういう袋によくドラッグがはいってるのよぉ、きっと工事の人がドラッグやってたかここはドラッグをするための溜まり場になってる可能性があるかもね。。。。って、刑事か?とかくいろんな世界に首をつっむのが好きな私も、さすがにNYのストリート薬品にまでは、日ごろの研究が行き届くわけがなく。よって、サムが「あっ!」こんなところで工事の人たちはドラッグやってんだぁ、といったときは唖然とした。サムいわく、これニューヨークの「常識」だそうだ。サムのおかげでまたひとつ学習した。それにしてもたまに工事現場にいくとコーヒーを買ったときにもらうあの砂糖の袋がやたら落ちてる時があるが、それはそういうことだったのか。。。私は単純に工事現場で働くワーカーは飲み物にたくさん砂糖を入れるんだろうくらいにしか思ってなかったけど、そういうことだったとは。みんないろいろと知恵をしぼっているんだ。。。関心している場合ではないが。
当然のことながらお母さんはというと、そんな場所だったらあとからそのドラッグ・ディーラーがまたここの場所に来たりしたら怖いから嫌だと言い出したが、サム様はというと、そんなファンキーなところが逆に気に入ってしまったようだ。私はというと値段が悪くないのと、奥の小さいほうの家を賃貸するのならサムが管理するのに億劫にならないちょうどよい距離だと思ったのでプッシュする事にした。
そして、サム様は持ち家に引き続き投資物件をも持つことになった。そんな一般労働階級層にとっては夢のようなことを親の助けであっという間に成し遂げてしまった。その後のサムは、編み物をしたり、Tシャツにプリントしたり、ひたすら四角いバッグを単純作業のように縫い続けたりする生活をしているということだった。まったく憎たらしいやら、羨ましいやら。でもサムにもかわいいところがあって、その年のクリスマス私に細いモヘアで編まれたカラフルなマフラーをプレゼントしてくれた。出来ばえはと言うと、いくら不器用な私でもきっと30分もすればこれくらいのことは出来るようになるんではないかと思われるようなものではあるのだが、なんとも変てこりな色具合だとか、何故こんなに細くて、何、この長さ?みたいな不思議感は到底マネできない。なんともサムらしい作品。この変に細長いマフラーを首にぐるぐると巻いて外に出ると、なんとなく気分がワイルドになってなんか力がわいてくるから不思議だ。こうしてサムはわがまま娘なりに、ぶっきらぼうにみんなのことを愛してるんだと思った。こんなやつ手助けするなんてまっぴらごめんだと思ってみてもなんだか憎めない。このマフラーも少しは私のことを思いながら編んでくれたんだと思うと、それだけでなんとも心が温かくなる。だから私もサムがどんなにわがままで自由気ままでも、結局のところ意外と好きだったりするし、また是非一緒に仕事を出来たらいいなと思っていた。
それから2年くらいたった去年の秋。サム様のお母さんからまた連絡が。。。今度はさすがにまた物件購入というわけにもいかないだろうから、何が起きたのかと思ったものだが、実は相当うれしかった。サムのお母さんの名前はパメラ(通称、パム)というが、「パムだけど、覚えててくれてるかなぁ」となんとも控え目な出だし。勿論、私がサム&パムを忘れるわけがない。また連絡がこないかなと待ち望んでいたのは私のほうだ。パムいわくナント!サムが結婚したとの事。ゲッ!どこのどんな人と?!正直、あちゃ〜、何を早まって結婚をしたのか?とか、男の方が、サムはあれでいて財産持ちだと知り、財産目当てで結婚したいといったのではないかと余計な心配をしてしまった。親がいいといっているのだから私が心配するようなものでもないとはわかっていても、サムのハズバンドに会うまでは、なんだかやり残したプロジェクトがいつもつきまとっているような中途半端な気分だった。でもサムのお母さんからよくよく話しを聞いてみると、結婚した&ハズバンドの仕事を手伝っているということで、オフィスにほど近いウィリアムスバーグに引越しをするという。更にそのハズバンドは聞いた感じでは若いのにもかかわらず、出版社の「社長」でっ、オフィスはリースしているがタウンハウスをもっているから二人でそこに住む予定。なのだそうだ。編み物の創作で頭が一杯と思いきや、サムちゃんと「将来」も考えていたのね。実際に考えていたかどうかは確かではないが、サムのやつ申し分のない相手を掴まえてちゃっかり結婚までしちゃって、相変わらずなのは私だけじゃん?!一体この差は。。。何もしなくても愛される体質のサムと、勝手に一人でがんばってます体質の私。。。
それでどうしてパムが私に連絡してきたのかというと、サムが結婚してアパートを出て行くことでコープのボードに散々な目に遭わされたらしい。だんな様のタウンハウスに引っ越しするのでアパートを売るか賃貸に出したいのだけど、知らない人に賃貸するのは面倒くさいから親に借りてもらう(どうして親にする?)とか、親に買い戻してもらおう。と考えた。結果としてサムは親に買ってもらったアパートを親に売ったらしい。出たぁああああサム様!しかも、親に$225,000で現金で買ってもらったものを何故、$450,000で売る?それだけではなく、どうして親はそれに合意する?ってことは、娘に$225,000を贈与しただけではなく更に$225,000も払う?あぁ、やっぱりサムは悪魔だ!!娘も娘なら親も親だ。許せなぁーい!もしかしたらサムの旦那とやらが企んだ仕業か?今度、サムはその旦那の悪知恵に乗せられてしまったのか?かなしい〜〜〜!
そんなことを嘆いている場合ではなかった。結果的にどうしてパムが冴えない口調で私に連絡をしてきたかというと、要するに娘が親に買ってもらったアパートを$225,000の利益を乗せて親に売るという不思議な家族をコープのボードメンバーがただものだとは思わなかったということだ。両親がどんなに金銭的にそのコープを購入する経済力があろうともコープのボードとしてはこの親子どうにかなってるわくらいの目でしか見ていなかったのだろう、だから両親が更に娘にお金を払って購入するというのは却下された。だからパムは私に「普通」に購入する人を探してもらいたいと依頼してきたのだ。なんとも不思議な親子だこと。
マーケットの状況を考えるとそれくらいの利益を上乗せして売却するのは一切困難を要さない仕事だった。なのでマーケットに出して2週間もするとオファーがきた。なんと!今度はサムの息子バージョンか?というような人たちがオファーをしてきた。なんとも不思議な因果関係だ。両親が大学の先生をしていて息子(何もしていない、でも何かしたいらしい)にこのアパートを買ってあげたいがボードは大丈夫か?それはもう私の仕事ですから、大丈夫なようにしますけど、なんともまじめきわまりない両親の顔をみていると、あぁ、この息子も、大学の先生にはならないにせよ、立派になって親孝行できるような、まっとうな人生を送ってもらいたいもんだと、また余計な感情が沸いてしまった。ということで、サムのアパートはなんの困難もなく、男版サムの手に渡った。愛される体質のサムは、またもや何の努力もなく$225,000の大金を手に入れた。そして、なんと!今度サムに子どもが生まれるらしい。余計なおせっかいだとは思うけど、きっとサムの子どもならサム以上にわがままし放題になるに違いない。あーあ、どうなるんだ。サムのお母さんから、今度は、孫のために物件を購入したいのだけどと電話がかかってくる日もきっとそう遠くないかもしれない。
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