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ニューヨークで不動産業に関わって面白いと思うのは、何故か英語は何を言ってるんだかわからないような人が物凄い勢いで不動産を所有している事。特にブルックリンは、大御所とも言うべきユダヤ人を筆頭に(あっ、彼らは英語ばっちりです)ありとあらゆる地域でそれぞれの人種が不動産番長をしている。数字さえ間違えなければある意味、英語なんてどうでもよいというのが不動産の醍醐味。最初、この仕事を始めたとき、それぞれの地域の文化を知らずに人の家に土足で踏み込むような無礼な日本人(とうか、私はアジアン人代表です)になっていたが、仕事をこなしていくうちにどこにも書かれていないが、何故かみんなが知っている決まりごとがある事に気づくようになった。でっ、それぞれの地域の番長とのお付き合いの仕方もマスターせざるをえなくなった。 番長には番長の言わずと知れたルールがあって彼らには私の常識など全く通じないという事を知るのにそう長く時間は掛からなかった。何度かコラムでそれぞれのバイヤーのことを書いたから、不動産を購入した事がない人も、なんとなくニューヨークで不動産を購入するという、自分なりのシナリオができてきているのではないかと思う。ところが、不動産を購入するという事はもしかしたら、愉快な不動産番長から購入する機会があるかもしれないという事だ。この番長たちとのお付き合いははかり知れない奥深い愉快なものがあるので、是非ご紹介しておきたいと思う。
不動産業務に関わり始めて思ったのだが、不動産を仕事とする人は人とのつながりがとっても大切で、なんでもいいけどいろんなところに属するというのは大切な事だということを始めてから知った(遅い!)例えば、なんか冴えないおばさんでいつも髪みだれてて眉間に皺寄せてるのに商売繁盛のエージェント、聞けば4人の子供を地元の学校に通わせている。それぞれの子供の学校行事や習い事に顔をだしていると、あら不思議、仕事がじゃんじゃんくるじゃないの、ってな具合。または、ブルックリン・ハイツにはハイツ・ラケットクラブというのがあるが、そこは主にユダヤ人の社交の場所でそこで理事をしている人。 なんだかあまり仕事をガツガツこなしているようには見えないのに何故かナンバーワンの座をキープするエージェント。地元のボーリング・クラブに属してる、中山律子を知らなくてもて(古すぎ?)律子以外の何者にも見えない、律子似のアジアンも、いつもボーリングと仕事でてんてこ舞い。ところが、私の場合、何も知らずにただ「不動産なら出来るかも!?」という勘違いだけてこの仕事を始めてしまったが、気づいたら私には社交するような趣味もない、趣味といえば映画(しかも、一人でも平気で観にいってるから駄目じゃん)無宗教、子供もいないし、地元のこと何も知らないし、地元の「人」の事も全く知らない。何をしてるんだ外人!という状態でいた。ところがある時、どこにも属さない、ある意味「無」の私を気に入ってくれたおじさんがいた。というのも最初のうちはあまりにも仕事が暇で、なんでもやりまっせ〜っという状態だったから、しつこいおじさんもなんのその。。。私も暇だからとことんお付き合いしまっせ〜という態度でいたお陰で、ジョンは私を外人だけど彼の弟子にしてくれた。この地元不動産王のジョン、不動産を沢山抱えてるにも関わらず、何故か古い地元エージェントに好かれない理由を最初は気づかなかったがかれこれ6年彼とお付き合いをしていると、あ〜、ジョンは私以外にはいないのねくらいに思えるくらいにいかに彼の性格が「一般」とかけはなれているのかが分かってきた。
最初、ジョンにあったのは彼の所有するコンドミニアムを見にこないかという彼からの連絡だった。彼はランダムに地元の不動産エージェントに電話をしたと思うがきっと古いエージェントは「またかよっ」みたいな感じで誰も彼の誘いに乗らなかったんだと思う。それを知らない私は喜んで、電話を切って真っ先に彼の所有するコンドミニアムの下見にいった。彼の事を全くしらない私はありとあらゆるおべっかを使い、この物件を是非単独で売りたいと申し出た。すると、OK~!って、ウソ、ウソ!えっ?いきなりいいんですか?こんなに簡単で?早速オフィスに帰って契約書を送る準備をして、マネージャーにサインをもらいにいく。マネージャーは笑って「オー、よくやったな〜、グッド・ラック」その時、彼の言うグッド・ラックの意味をあまり真剣に考えなかったが、今思うと、あ〜、そうねっ、グッド・ラックってそいういう事だったのね、とわかったのだけど。
ジョンは不動産を始めてかれこれ20年、一文無しからはじめ、今ではブルックリンの、というか地元の不動産王(自称)だと言う。最初びっくりしたのはいきなり自分がどれくらい金持ちかということを見せる為に私に銀行の残高を見せてくれた事だ。大きな子供が二人いるけど、離婚をしていて今は金目当てで(彼女がねっ)、自分と付き合ってるイギリス人の彼女がいるということ(自分で自分の状況をそこまで見極められるのが凄い!)不動産をやる前はFBIエージェントだった事(マジ?)でっ、弁護士だという事(見た目は、カーペンター)と、聞いてもいないのに弟子入りした私になんでも話す、話す。最初はなんか私の事を好きなのか?とこれまた思ってしまうほど、朝起きてから寝るまで私に電話をかけまくっていた。彼とのお付き合いの仕方を最初知らない律儀な日本人ビジネス・ウーマンの私は失礼がないようにいちいち対応していた。これも仕事のうちだもん、趣味もない、何も知らない私にチャンスを与えてくれた人だから我慢、我慢!って我慢できているうちは言ってたもんだ。。。
彼に与えられた物件を、これまたビギナーズ・ラックというやつだろうがあっという間に売ってしまった私。ジョンは自分のお陰でケイコもやってるくらいの言い方だが、正直ここまでして売れないって〜のは考えもんでっせ、ボス!と最初から言ってやりたいくらいに強引なマーケティングをした。当然、暇人な私は彼のインストラクションに従い全てをこなしたが、それはそれ以外に方法を知らなかったからそうしてしまったわけだけど今の私にはそんな話は通じないという事を沢山してしまった。にも関わらず、親分は私をもっともっと気に入ってくれて、その後、私は彼の物件を次から次へと4件売った。コーコランのエージェントなのにも関わらず、私は地元番長に弟子入りしたがごとくジョンのオフィスに毎日のように通った。この番長はとってもケチだ。だからこんなに不動産を持っているんだろうと思うが、ケチすぎでこの世のエステティクなどは眼中に無いんだと思う。とにかく毎日同じ服を着ている。しかも、きっとバーとかで景品でもらったようなお酒の名前が書いてるようなTシャツをいつもきている。ところが、彼の事をよくよくみると実はケビン・コスナーがもしかしてケビン・コスナーじゃなくって一般人として生きていたらこんな感じだったかもしれないという顔をしてたりもする。でも間違えてはいけないのは彼はケビンじゃなくって、ケチなジョンだという事。ケチなジョンは自分で自分の弁護をしてしまう、何故ならばケチすぎるから弁護士は雇わないで自分で弁護をする。あるとき、買い手の弁護士が私に「ジョンと話してると会話が弾む、クロージングの時に彼に会うのがとっても楽しみ」となんかロマンスを込めて私に告白してきた。なのでうっかり私は「見た目はちょっとケビン・コスナーに似てるよ」と言ってしまったのだ。その時はアメリカ人にはアメリカ人の私には理解できない良さを発見できるんだろうなぁ、くらいに思っていた。でも、クロージングの時に彼女に大変なショックを与えてしまった事に後から大変、責任を感じた。
ジョンと仕事をして思う事は、決まり事のないことがあまりにも多すぎて毎日がサプライズだということ。彼にユージュアルという事はあまりないと思う。だから、毎日いろんな情報を更新しなくてはならない。始めて不動産を購入するのに売り手がジョンみたいな人だったら、「うわぁ、このエージェント怪しい」と思われても仕方がない。最近、日本人のお客さんでたまたま彼の物件を気に入ってくれた人がいた。彼がオファーをしてる間にも3度ほど「売ろうかなぁ、売るのよそうかなぁ」という事があった。バイヤーは理解のあるお客さんで「いいですよ、待ちますよ」とはいってくれたけれども、私のほうが堪忍袋の尾がきれて結局彼にはもっといいものを買ってもらった。その事を実はジョンにも見せ付けたかったというのがある。3週間くらいしてから「あの客どうした?」とまんまと聞いてきたから「マンハッタンにもっといい物件をみつけちゃってさ〜」といったら一瞬目が悲しんでいた。でも、2秒後にはいつもの顔に戻っていたのだけど。
彼の扱いに慣れた私は彼の一番弟子を卒業して今は独立し営業をしている。だから、ジョンが一日に何度電話をしてこようが立て込んでいる時は電話を気安くとらないようにもしている。ところが番長は番長らしく、私を待ち伏せしている。電話に出ない私におしおきをする為に待ち伏せをする。番長は、私が毎朝ジムに行く事を知っていて、その時間にジムの階段に座っている(怖っ!)もう、関所を通さないぞくらいの勢いで、そこに座っている。人がトレッド・ミルで必死の顔で汗をかいていても彼は遠慮なく物件の話を普通の顔をして聞いてくる。もはや、番長に一般常識は通用しないようだ。一度、入門してしまうと抜け出せない。まるで地元キャングとの戦いにすら思えてきてしまった。
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