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お蔭様で私がこのコラムを書き始めてから、かれこれ一年以上の連載となった。なんと!このコラムを読んで沢山の方からコメントを頂き、感謝・感激の日々を送る私。そして今回は、このコラムを読んで、ニューヨークでの不動産購入を決心したというナオミさんのストーリー。
たしかあれは 2005 年の初夏だったと思う。コラムを読んで連絡しましたというメールが来た。日本在住。「ぜひ大好きなニューヨークで不動産を購入したい。そんなことが可能なのだろうか?でもこのコラムを読んでいたら、なんだか自分にも買えるような気がしてきた。それで、いかがなもんでしょうか?」という質問。いかがなもんかと聞かれても、「大丈夫ですよ」あるいは「ちょっと難しいかもしれません」といった具合に簡単に答えが出てくるわけではない。日本在住ということ以前に、NY在住の人にとっても、不動産購入には
10 人購入者がいれば良くも悪くも 10 通りの購入プロセスがあり、毎回さまざまな困難にぶちあたってしまうからだ。
毎回どんな困難が待ち受けているのかは、はっきり言って最初の段階では予測不可能。というよりも、そんなこと想像したくないよ〜と、かなり弱気のかまえになってしまうこともたびたび。こんなことを言うと、「えっ?どんな困難?そんなに問題になるような事は嫌だな」と思われてしまうだろうが、ゲラゲラ笑いまくって、ヘラヘラとしてるうちに「お〜、買えたね。ラッキー」というケースは、ほとんどないということも事実だ。もしかしたらそいういう人もいるかもしれない。大きな買い物をするのが大好き!大きな買い物をするとワクワクして、とても楽しい気分になるという人が。でも、たいていの人は大きな買い物をするとき(ちなみに自分でお金を出すとき)、実際に自分がこれからしようとする判断が正しいのかと迷い、混乱する。不動産購入という人生でも最大規模の「大きな買い物」に関するプロセスをストレスだと感じる人が大半で、それはとても正常な心理だと思う。だから私の仕事は、それが可能かどうかを見きわめることではなく、いかにそのストレスを最小限にとどめる事ができるかということだと思っている。
コラムを読んで購入してみたいと申しでてきてくれた最初のお客さんは、日本在住の30代女性。国際線のフライトアテンダントをしているナオミさん。彼女は月の半分くらいは、仕事の関係で海外のホテルなどで過ごすため、日本にいるときは実家住まい。仕事を始めたときは、成人らしく一人暮らしなどにもチャレンジしてみたそうだが、月の大半はアパートにいないことと、郵便の受け取りや、その他の面で多々面倒なことがあり、だったら実家にいた方が断然便利だし、アンド経済的という事で、一年後には実家にユーターン。それからは、かれこれ浮いた住居費を貯金に回していたそうだ。
日本では不動産購入=ローン地獄というようなイメージがまだまだ強いが、マーケットが安定して上がり続けているニューヨークで不動産を購入するのは、かしこい投資だということはご存じの通り。そして、私の「その気になれば買える、貴女にも!」みたいなモットーのコラムを読めば読むほど、ナオミさんの「購入したい、私にもできるかも」という気持ちは、強くなっていったようだ。私と何度かメールまたは電話でやり取りしていくうちに、こういう事が起こり得るだろうが、起こらないかもしれない。起こったらその都度、対応して、解決できればネクストという感じでステップを進めばいい。もし、解決のしようのない問題が起こったらそこで諦めればいいし、とりあえず出来る限りの事をやるしかないでしょ。そ〜しましょ。ということで、とりあえず前進あるのみ。ということになった。
まず最初の困難だったのは、日本にいながらにしてアメリカでモーゲージ(住宅ローン)が組めるのかどうかということ。組めるとすればいくらぐらい?それによって購入できる物件の金額が決まってくる。ということで、最初のプロジェクトはモーゲージブローカーとのコンタクト。
ニューヨークにいるモーゲージ・ブローカーを紹介して彼女とメールのやり取りをしてもらった。噂では海外(アメリカ以外の国)に在住しながら、ニューヨークで住宅ローンを組んだという話は聞いた事があったが、実は実際にはそれらの人の名前も国籍も職業も知らなかった。あまりに無責任な話だが、実際にはどんなことが条件とされるのかもよくわからないまま、「メールしてみて。でっ、駄目ならいいじゃん、また別の方法を考えればいいんだし」というなんとも説得力のない発言をしてナオミさんを励ます私。ナオミさんからは「だよね。分かった連絡してみるよ」という潔い返事が返ってきた。
後日、彼女からのメールには、日本で会社勤めをして収入があるという事を前提にローンが組めそうだという嬉しいお知らせ。でも、ナオミさんの希望したローンの金額があまりにも小さかったからか、ローン・ブローカーから「そんな安い物件はニューヨーク中どこを探してもないはず」、とも言われちゃったそうだ。彼女はバリバリのやり手ブローカーで、常にビックなお客さんしか相手にしていないのだろう。彼女のニューヨーク不動産価格というのはマンハッタンの高級コンドの価格で、ナオミさんが組みたいと申し出た金額は有り得ない、または車でも買うのか?というような金額だったに違いない。少し不安になったナオミさんだったが、マリア(そう、彼女の名前はマリアぁ〜!)は、「そんなにいい物件を探す事ができたら是非連絡ちょうだい。是非ともお手伝いするわっ」とも言ってくれたそうだ。無事、ローンのことが解決し、まだこの時点では会ったこともないナオミさんと、心の中でハイ・ファイブをした私だった。
今更こんな事に感心していたら老人かと思われてしまいそうだけど、インターネットのお陰で、世界はなんとボーダレスになったものかとつくづく思う。日本にいても、ニューヨークの不動産マーケットをタイムリーにチェックすることが簡単にできてしまう。あまり英語なんて出来なくても、数字さえ読めれば(数字の桁さえ間違えなければ)あとは写真とかフロアープランを見て、ヴィジュアルに状況をゲットする事が可能だ。宣伝みたいだけど、私の所属するコーコラン不動産のサイト( www.corcoran.com )でも、値段をみて気に入った物件があれば、モーゲージ・カリキュレーターというのに頭金の額をいれて、クリックすると月々の返済額も自動で計算されてでてくる。
買うと決めてからは趣味のごとく、時間さえあれば New York Times の不動産のページをチェックするようになったナオミさん。実験的に購入するとは言わないまでも、行き過ぎた趣味に大金を使ってしまって、首吊り、または人殺し(オソロシヤァ〜)ということだけにはならないような程度の価格で購入できそうな金額を絞り始めた。検索していると、マンハッタンに購入できればそれは夢のようだが、なんだかブルックリン、クイーンズ、ブロンクスと検索を広げていくと、意外と思った金額よりも手ごろで見た目もまともな物件がざくざく出てくるではないか。当然、マンハッタン以外のニューヨークというのは見たことがなかったナオミさんだが、だんだんとマンハッタン以外のファイブ・ボローといわれる地域のほうがいいんじゃないの?と思い始めた。日本でも、都内に勤務してて、港区在住です、なんて人はほとんどいないように、ニューヨークでもマンハッタンに勤務してて、マンハッタン以外の地区に在住している人がほとんど。なので賃貸に出す事を考えて、マンハッタンに通勤可能な地域に購入を考えるのは当然のなりゆき。かたくなにニューヨーク=マンハッタンと考えていて「あ〜、なかなかいいのがないな」と思っていたナオミさんだが、ほかの地域でいいのがあればそれで
OK と考えられるようになったのが何よりもの大きなステップになった。
ローンを組めると分かったら、次は物件探しだ。この時点でナオミさんが初めて連絡をしてきてくれたときからかれこれ4〜5ヶ月が経っていた。そしてついに物件探しのため、ナオミさんが
Thanksgiving の時期にニューヨークに二週間滞在するという事になった。本当はその一ヶ月くらい前から、目ぼしい物件を検索はしていたものの、目をつけていても実際にナオミさんがニューヨークに来たときにその物件があるかも分からないという事で、とりあえずニューヨークに到着してからスケジュールを考えましょ、という事になった。勿論、不動産販売は私のプロフェッショナルだが、日本に住んでいるお客さまのお手伝いをするというのは前例がなかったので、何事も「とりあえず、こうしましょ」みたいに何でも手探りでしかものを言えないのが何よりももどかしかった。何も約束できない私に対してガミガミ言ったり、イライラしないでいてくれるナオミさんに会うのがとても楽しみだった。なんだか、気分はブラインド・デート?!電話で何度か話しをしているから感じはなんとなくつかめるが、電話で話しをする時間帯がニューヨークの昼間、日本の真夜中ということが多く、いつも心なしか声がヒソヒソと悪さをたくらむかのようなトーンだったということも、そういう雰囲気を盛り上げていたのかも。
もう何年もニューヨークに住んでいるのにいまだに慣れないのは、ニューヨークでは感謝祭間近になると急に冷え込みが増すということ。少し大げさかもしれないが、前の週まではジージャンを着ていたのに、次の週には突如としてダウンコートに手袋、マフラーが当然のファッションになる。それを知らずにうっかり秋のいでたちでニューヨークに到着してしまったナオミさん。オフィスで初めて会った日は二人で顔を見合わせるなり「寒いですねぇ〜」「本当に寒くてすみません」と謝ってしまったほどだ。実際に会ったナオミさんはヒソヒソと話すどころか、さすがは国際線フライトアテンダントだけあって、背も高く、人目を引くような素敵な人。
感謝祭の前の週という事で、不動産マーケットにもあまり活気が無かったのは良くも悪くもあった。マーケットに活気が無いということは、あまり売り物件が豊富ではないということ。でも、マーケットが静かな分、私の仕事もスローという事で、かなり二人でじっくりと話しをすることができて、時間をかけて物件を検索することができた。とりあえず、いろんな不動産情報をインターネットから探し、滞在している二週間以内に出来る限りの物件を見て、決める!という目標を立てた。と言っても、
How? という文字が二人の頭をよぎってとまらない。なぜならば、思っていたよりも、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスと検索しても、なかなか目ぼしい物件がでてこないじゃないのお。この前までの物件はどこに?うそ、うそ、ここで何してるの?ナオミさんの頭はクエスチョンマークで一杯。
でも、ナオミさんの時間を無駄にするわけにはいかないから、これまたとりあえずマンハッタン以外の地域を自分の足で歩いてもらうことにした。そしてここいいかも、と思った地域を決めてそれでその地域に絞って物件探しをすることにした。なんだか順序が逆な気もしたが時間を有効に使うために、地域検索そして物件はでてきた順に見ていくことにした。本当は次から次へとお車でガンガンご案内したいところだが、無い!見せられる手ごろな物件がよりによってないじゃないのぉ。わざわざ日本から来てくれたお客さんを前に危機迫る。なんだか申し訳ない。寒い。身も心も寒い。まずい。ナオミさんの購入意欲が寒さにかき消されないうちになんとかしなければ・・・。 |